鮨処いとう

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新年特別企画<談話‐月間コアより>
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「すし」の漢字と江戸前
「新年特別企画<談話‐月間コアより>」 

新年あけましておめでとうございます。 今回はこれまでの「へぇーそうなんだ」と異なりますが、新年特別企画として(株)日本設備工業新聞社発行の「月刊コア」2006年1月号に掲載された「新年特集2006年新春 水回りの夢を語る」より私の談話を抜粋しお伝えしたいと思います。

【夢もいいけど・・・】
新年早々楽しい夢を語れなくてスミマセン。赤坂で鮨屋やってますが、まず、とにかくこれだけは絶対直してよ!ということを最初に申し上げます。  それは下水の臭い。私の店の近くもそうですし、銀座、新橋、赤坂の飲食店、飲み屋さんが集まっているような地点で、狭い道路の脇にある側溝あたりからもうホントにいやぁ〜な下水の臭いが立ちのぼってくるんです。楽しく食べておいしいお酒を飲んで、そういう気分でやってくる街に下水の臭い!飲食店をやっている連中と話をすると、ほぼ全員言いますね、ありゃひどいって。でも、発生場所は、よく分かりません。毎日というわけでもないんです。側溝にかぶせてあるコンクリートのカバーに時々空気抜きみたいな穴があるところから出ているような気もしますし、側溝がなくても臭うことがあるみたいですし。あまりクンクンしたい臭いじゃないので、真剣に臭いの元をたどったことはないんですが(笑)・・・。  ウチみたいな鮨屋は、厨房で焼き物もしますから、とにかくかなり能力の高い換気扇で排気します。飲食店はまずみんな同じようなものです。厨房内の空気、煙、臭いを強力に外に引き出しますから、当然そこに他の空気が流れ込んできます。そして入れ替わる、つまり換気されるわけですよね。すると空気の流れとして起こることは、〈外気→客席→客室内の空気→厨房→外〉とまあこうなるわけです。その時、外気に下水の臭いが混じっているとしたら・・・。これはもう悲惨の一言。お客様の席に下水の臭いが流れ込むことになります。「この店、臭いなあ」なんてお客様に思われたらもう商売は一巻の終わりですヨォ。実は、ウチの店でも何度かそういうことが起こって慌てたことがあるんです。噴飯ものです。空気清浄機で対応できるようなものじゃありません。  こういうのをビルピット問題って言うんだって、私も勉強しましたよ。ビルの排水槽の中で腐敗が起こって、硫化水素が出て臭うという場合が多いらしいとか説明はまあ分かりました。でも、ビル管理の責任なのか、とにかく臭うのは下水道などからですから下水道や側溝の管理側の責任なのか、そういうことはまあおいといて、下水道の使用料も支払っている当方としては、即刻異臭を解決してもらいたいんです。  銀座、赤坂でこんなことが起こる!?我が日本の代表的飲食の街ですからねぇ。とにかく何とかして下さい!

【おいしい水をふんだんに】
水道の水、私は長い間飲んだことがありません。塩素消毒された水道水は、お客様にお出しできる水ではありません。水道関係の方には申し訳ありませんが、「食」を売り物にしている私どもとしましては、これはもう常識です。昔は、田舎じゃ、水源から引いた水道の水がとてもおいしくて、それこそ「鉄管ビール」なんて言われていた時代がありました。それが今では、様変わり。ガソリンよりも、さらに安ワインよりも高い水がたくさん売られています。ウチでもフランスの水などを使っていますが、なかなかコストもかかります。  水道に連結した浄水器も使います。例えば出汁を取るために大鍋に浄水を溜めたり、大型の湯沸かしポットに浄水を溜めたりするのにかなり時間がかかるんです。いい浄水器ほど濾過などに手間がかかりますから、浄水の出はチョロチョロで、ドバッとは出ません。私たちは毎日下ごしらえから始まって戦場みたいに忙しい商売ですから、このチョロチョロの時間はストレスですね。  そこで、提案なのですが、普通の水道と並行して、飲める水・おいしい水の水道って引けないのでしょうか?蛇口が二つ付いていて、一つは上水道、もう一つは『高質水道』です。値段は高くてかまいません。ボトルに入ったフランスの水より安いのは当然だとしても。  「新たに『高質水道』専用管を引き回すにはあまりに金がかかるし、そんな需要がたくさんあるわけではない。」ってことですかぁ?残念ですねぇ。公共の水道担当の方たちは、これだけ大きくなった高質水、おいしい水のビジネスをみすみす見過ごしてしまっているんじゃないでしょうか?  エッ、ビル単位でやればできるかも?ですって。確かに。飲食店ばかりが入っているビルなどの場合はできそうですね。ボトル入りミネラルウォーターって、ヘルシーをなんとなく看板にしていますが、石油を原料としたボトルを大量に使ってますし、実はあまりエコじゃないと思うんです。このあたりはまだまだ工夫の余地がありそうですね。

【ラップ】
ゴミ、廃棄物の問題については、難解なことが多いですね。飲食店もそうですが、個人の方々も地域ごとの分別のやり方についてよく分からない、自治体の清掃担当者から説明を受けてビックリしたなんてこともあるようです。お店から出るゴミはもちろん事業用ゴミですから、毎月相当なお金を支払っていますので、ゴミの量や分別については結構敏感な意識を持っているつもりです。分かりやすいということ、暮らしや私たち飲食店の実態に即して守れるルールであること、これは大切なことだと思います。  飲食店の厨房で、ゴミに関してホントに困っているのは、ラップの扱い。どのお店に聞いてもみんな混乱、困惑の体。飲食店というのは、これはもうラップなしでは生きていけない業種なんです。かなり大量にラップのゴミが出ます。魚のアラが付着していたり、油が付いていたり、だいたい汚れています。ある方に依頼して、行政の担当にお尋ねしてもらったのですが、汚れたラップは洗って不燃ゴミ、つまりプラスティック類ということで出して下さい、これが原則です、とのこと。でもねえ、使用済みのラップは、キッチンの仕事をした方ならどなたでもお分かりになると思いますが、すぐにくっついたり、しわになったり、くちゃくちゃなわけで、それに油とかいろいろべったりついているのを洗うなんて芸当はできっこありません。それを戦場状態にある飲食店の厨房でやれってこと自体無理ですよ。ラップ洗浄専用の人間を雇わないといけないくらい(笑)。  行政に尋ねて下さった方は、次のように言っています。 「そうはいっても、ラップを洗いにくいということは行政も承知らしく、とても汚れたラップが仮に可燃ゴミの袋に入ってしまったとしても、大量でなければしょうがない。汚れたラップだけのゴミの袋となるとこれはルール違反が明らかに分かるから、あまり目立たぬようにそっとね。てなことを非公式に言っているようだ。実際は今みんなそういうことになっているんじゃないのだろうか。」  表だっては言えないのでしょうが、毎日のことなのですから、みんなに分かりやすく解説してもらいたいし、意見も聞いてほしいですよね。  東京で言う『不燃ごみ』という言い方もなかなか微妙なものがあります。ラップが不燃ごみに分別されるなら、それにするのが面倒だから、可燃性のラップを作ってよ、と言いたくなります。でも、不燃ごみは、どうも東京あたりの場合では、破砕して、金属などは回収した上で、中央防波堤あたりに埋めていると聞きます。『不燃』じゃなくて、『埋め立て』か『埋設』の方が合っていることになりますよね。  一方、容器包装リサイクル法というのがあって、スーパーとかはお金を政府に払っているらしい。販売された商品を包んでいたラップは、そのお金でリサイクル、あるいは処理されているという話もある。個人の家で使ったラップの処理にはその金は適用されない、同じラップなのにね。いやあ、難しい。ホントにやさしく解説してよ、分かりやすく。

【ディスポーザ】
海外で鮨を握る仕事もやりましたものですから、キッチンに付いているディスポーザ、これは当たり前のものだと思っていました。ごみの量も減りますし、私たちもとても簡単に処理ができます。でも、どうやら日本では、下水道の関係でダメみたいです。これから少しずつ緩くなりそうだという話を聞いて、そうだろうなあと思いました。  ごみ処理の負担を増やすか、下水処理の負担を増やすか、どちらに負荷を増やすのかという選択だと思います。私たち事業を営む者から見ますと、これはもう圧倒的にディスポーザ賛成です。環境に優しくない、というならディスポーザにこだわるつもりはありませんが、便利で使いやすい。さすがにプラスティック系のものをディスポーザで破砕して流そうという人はいませんから、是非今年の夢に加えておきたいものです。

【水栓】
手を触れなくても水が出る水栓、足踏みで水を出せる水栓などあるみたいですね。でも、私たちが使う現場の水栓は、それほど進化していません。  手が汚れていても、開閉が可能で、水量や湯温も微妙に調整できる(これが重要です)業務用水栓、是非開発して下さい。鮨屋でどういう使い方されているのか、フランス料理屋の厨房ではどうか、ホテルの厨房ではどうかなど実地のチェックが不可欠だと思います。業務用水栓という新ジャンルの新商品、これも今年の夢に入れておきたいですね。

【トイレ】
飲食店でのトイレの重要性、これはスゴイものがあります。おいしいものをかっこよく食べていただいても、トイレがダメだとリピーターにはなって下さいません。一番難しいのは、小便器前の床ですね。飛び散った尿のあとが付いたり、変色したり、いくらお掃除を頻繁にしてもうまく対応できません。その部分だけ特別な素材のものを使うというオプションもあるのですが、かっこ悪い。格好良さって飲食店の場合とても大切なんです。ご家庭とは違う非日常の世界でおいしいものを食べ、飲み、エンジョイする場なんですから。トイレも特別でなきゃいけません。拭えばあっという間にきれいになり、痕跡も残らず、変色もしない床素材、もちろん格好いいヤツを開発して下さい。  それと便座シート。これも紙製はくっつくし、置きにくいし、機械的に自動で出てくるものも見ましたが、どれもぴんと来ません。洗浄便座の国ニッポン、是非便座シート、超衛生的便座回りの工夫お願いします。  できあがったら、すぐ導入しますから。

月刊コア (株)日本設備工業新聞社発行 2006年1月号「新年特集 2006年新春 水回りの夢を語る」より

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